2018-01-01から1年間の記事一覧

選び得ぬもの

私たちは、「選ぶ」ことに慣れている。どこに暮らして、だれとつるみ、どんな仕事をするか。トレードオフはどうしても発生するし、選択肢の範囲に限りはあるが、その範囲内でならどうやって生きていくかはあなたしだいだ。あなたが気分を変えれば、いかよう…

ニセモノの人生

人生というものは、大海原を自由に航海し、大樹海を泳ぎ、大草原を駆けることだと思っていた。無限に冒険が広がっているのだと思っていた。 そういうふうにして人生を送っている人もいないことはない。だけど、ほとんどの人はそんな人生からは程遠い。わたし…

人生に高速道路を探すのはやめよう

「レールから外れると人生は自由になる」という言説がある。これは、まちがっている。レールから外れれば外れるほど、「遅れを取った」分を取り返さなければいけない気がして、人一倍、一直線な道、いわば「人生の高速道路」を走ることに必死になってしまう…

生活がこわい

このごろ、夜遅くまでずっと大学に残る荒んだ生活をしていた。静かな夜の街を歩いて、帰宅したら寝るだけの生活。あるいは無為に夜更かしをしていることもある。食事は自室ではとらず、コンビニで買ったり食堂に行ったりしてすませる。 ところが最近引っ越し…

人生・自意識・凡庸さ

長い間、凡庸未満であることに劣等感を抱いてきた。 誰でもができることができなくて、誰でもが知っていることを知らなくて、誰でもが経験していることを経験していなくて。 だから、どうにか乗り越えようと歯を食いしばってがんばってきた。どうせ自分には…

減点法では優しくなれない

わたしはずっと、優しい人間になりたいと思ってきた。 だれかが困っているのに見捨てるなんてとんでもない。手を差し伸べられるようになりたかった。現実はそんなに簡単じゃなかった。気づけないことが多かった。でもそれ以上に多かったのは、気づいていたの…

書く意味

こんなところで何を綴っても、すべてがひどく自明なことでしかないのではないか。 これが情報量のある文章なら違う。役に立つ話でも、何かのストーリーでもなんでもよいが、とにかく知らなかったものを伝えるなら意味がある。でも、日常的な話題について日常…

心はナマモノ

私たちは、ナマモノです。ざっくり言ってしまえば、単なる肉のかたまりです。常温に放置された肉のかたまりです。考えてみてください、これってすごいことだと思いませんか? 肉を冷凍庫にしまい忘れて常温で放置していたら、数日のうちに腐って、臭くてたま…

他人と接することは、自分と接すること

友人と会う。恋愛関係の愚痴を聞かされる。なんだか、同じようなことを以前も聞かされたことがある。あのときは違う相手についてだった気がする。「それ、前も言ってなかった?」とは言わなかったけど、聞きながら気づいたことがある。 恋愛にせよ、友人関係…

カコケイのカンケイ

人生を生きていると、いろいろなところで、いろいろな人間関係を築いていくことになる。初対面からはじまって、だんだん打ち解けていって、安定期に入り、しかしやがて終わりを迎える。引越しであれ、卒業であれ、転職・退職であれ。そして人間関係は現在形…

だから、優しいあなたはモテないのです

ネットの世界では「優しいのにモテない人間(たいてい男性)」が大きな存在を見せている。日本には限らず、"nice guys finish last"みたいなことを言うし、わりと広く見られる言説なのだろう。散々語られていることではあるが、あえて書いてみることにする。…

たとえだれも見てなくても

うそをついてはいけない。それは人にバレて怒られたり嫌われたり不利益を蒙るからではない。そういうケースもあるだろうが、それはうそが下手なだけだ。 どんなにバレないケースでもうそをついてはいけない。なぜならあなたは必ずあなたがついたうそを知るか…

裁いてはならない

あの人はバカだ。あの人は性格が悪い。あの人はキモい。あの人はチャラい。あの人は人生無駄にしてる。あの人は……。ああいう生き方は醜いよね。あいつファッションださいよね。あいつ調子乗りすぎてるよね。あいつかっこいいからって鼻にかけてるよね。あい…

よそものになる勇気

人は、よそ者であることに慣れていない。 みんな「続編」が好きなのだ。すでに知っていることの続きが好きなのだ。新しいことよりも既知のことを好む。シンゴジラを見ればわかる。あれは「日本社会」という物語の続編だ。コンテキストを共有している人たちの…

あやつる・あやつられる

わたしが思うに、この世で最も警戒するべきは、権力者ではなく、体格がたくましい人間ではなく、頭が切れる人間でもなく、感情が爆発的に激しい人間でもなく、腕の立つ役者だ。 何かを演じている人間には注意を払わなくてはならない。キャラクターを演じてい…

弱さをアイデンティティにしてはいけない

強いものは魅力的だ。ライオンや恐竜のように。一方、弱いものにも不思議な魅力がある。特に、その弱さが相手と共有されるときの引力はとても強い。けれどその引力には吸い込まれないように気をつけなくてはいけない。 ネットには、弱さを看板にしている人た…

故郷から逃げること

実際に正しいかというと疑いが大きいらしいが、「外国語でしゃべると別のペルソナになる」というのは本当だと思う。私なんかでも、英語でしゃべっていると、「さわやかにコミュニケーションできる、明るいけどまじめなやつ」みたいになれる。 これは作ったペ…

他人と比較して苦しむあなたへ

他人と比べて自分が優秀だのそうでないの一喜一憂するものではない。そういうのは言ってみれば受験勉強マインドだ。大人になったら人間はそんなに単純な一つの軸で評価できないことを知るべきだ。たとえ何らかの実績や昇進が非常に重要でも、それを達成する…

むやみに

むやみに約束してはならない。 Pacta sunt servanda, 約束したことはあなたを縛るから。約束を守る人間になるための一番の近道は約束をしないことだ。これは冗談で言っているのではない。本気で、むやみにできない約束をしてはいけない。したくない約束をな…

よい先輩になるために

何もしなくても気を遣われてしまうことを自覚する。非対称な関係だから、遠慮すべきところは遠慮するようにする。たとえいやでも、向こうからそうは言いづらいのだから。勘違いしてはいけない。あなたと後輩との距離は、あなたが思うほど近くない。あなたは…

スイッチをパチンと

スイッチというとどんな姿のものを思い浮かべるだろうか。某ゲーム機ではない。一般名詞の方だ。ボタンではなくて、二つの状態、オンとオフを持つもの。 まあ、なんでもいい、ちょっとそれを思い浮かべてほしい。それで頭の中でおもむろにパチンと切り替える…

尊敬されることは、孤独になること

先日、ある先輩にひさしぶりに会う機会があった。その人はこれまでに私が出会ったことのある人の中で一番と言っていいくらい尊敬する人だ。だから素直に言うことにした、「とっても尊敬しています」と。きっと喜んでくれると思って――。 しばしの沈黙ののちに…

人生は朝食バイキング

何人かで旅行して宿に泊まる。翌朝、朝食バイキングで、めいめい好きなものを皿に盛る。料理の選択肢には限りがあるのに、一人として同じ盛り付けの皿はない。これらはみな、それぞれの人生を映している。 人生において、決断力のある人間とない人間がいる。…

認知のゆがみ

「うちの代は変わってる人多いよね」と誰かが言う。わたしはあいまいに同意する。「あなたの認知の歪みはどこから?」と問いたくなるのをこらえながら。 だって、そんなの錯覚に決まってるではないか。うちの代が特に変わっているなんてことあるはずないのだ…

かける言葉

死にたがっている人と関わることが何回かあった。その誰も死んでいないし、実際どのくらい死ぬことに近かったのかはわからない。別にそれを知りたいわけでもない。ただ、少なくともその時点では、かなり危険でどうにかしなくてはいけない状況であるように思…

後知恵

後知恵だな、と思うことがよくある。よくわからないタイミングで妙に頭が回る。そのときだけ機関銃のように神経回路が発火して、どんどんアイデアが湧き出す。忘れる前に急いで書き留める。もし書き留められずに忘れてしまったら、もう戻ってこないから。普…

本当のミニマリスト

少し古い話題だが、ミニマリストなるものが一部で流行していたようだ。それはただアフィリエイト目的のブログが煽っていただけの実態のない現象だという説明も一理あるが、とりあえず実在した価値観だと考えることにしよう。 ミニマリストを人々がどう定義す…

言葉が好きな人

人と話しているとき自分の言葉遣いが正確でなかったことに気づいたらわざわざ話題を戻してでも訂正せずにはいられない人。 ほかの人の言葉遣いが間違っている気がするけどひょっとしたら自分の勘違いかもしれないからと黙っておく人。 そして後で確認して自…

予告編だと思ったら本編だった話

祖父母に会うたびに、いたく向こうがよろこぶ。ただ自分が顔を見せただけなのに。それは存在を肯定されたようでうれしいけど、どことなくむずがゆく思っていた。――これは、少なくない人に共通する、現在ないし過去に覚えた感傷なのではないだろうか。 でも、…

本気を出すこと

本気を出さない人がいる。そういう人は、だいたい忙しいふりをしている。いや、本当に忙しいのだろう。他のことが忙しいと言えば、ごまかせることを知っているのだろう。でも、本当は本気を出すのが怖いのだ。ある一つのことに全力で取り組んで、それが評価…