裁いてはならない

あの人はバカだ。あの人は性格が悪い。あの人はキモい。あの人はチャラい。あの人は人生無駄にしてる。あの人は……。ああいう生き方は醜いよね。あいつファッションださいよね。あいつ調子乗りすぎてるよね。あいつかっこいいからって鼻にかけてるよね。あいつ就職負け組だよね。あいつ勉強だけできてもしょうがないよね。あいつ……。そうやって、人を裁いてはいけない。それは、その基準であなたが裁かれないためだ。

勘違いしないでほしい。他人がその基準であなたを裁くわけではない。そういうこともあるかもしれないが、それは言わないで黙っておけば回避できることだ。態度にも出ないようにすればいいことだ。それでもきっとバレるとかそういう話はここではしない。

そうではなくて、あなたはたとえ内心だけでも他人を裁いてはいけない。あなたの裁く心は、そのままあなた自身を裁くからだ。どんなに隠していても、あなた自身はあなたの心を知っている。

人を裁くことは、あなたの心の中に呪いを生み出すことだ。ああいう性格にはなりたくない。ああいう人生は送りたくない。ああいう態度はムカつく。ああいう行動は蔑むべきものだ。そうやってひとつひとつの裁きをするたびに、あなたはあなた自身の可能性を狭めている。どんどん選択肢を抹消している。それはあなたの自由と未来を投げ捨てる行為だ。

特にまずいのは、あなたの癪に触ることは、本当はあなたが望んでもできない酸っぱいブドウでしかないことがしばしばあることだ。しかしいまのあなたにできないからといって、未来のあなたにもできないとは限らない。なのに呪いの言葉を心の中で唱え続けると、未来はどんどん固定されていってしまう。人間には一貫性を求める心理があるからだ。

だから、人を裁いてはいけない。それはあなた自身のためだ。