むやみに

むやみに約束してはならない。 Pacta sunt servanda, 約束したことはあなたを縛るから。約束を守る人間になるための一番の近道は約束をしないことだ。これは冗談で言っているのではない。本気で、むやみにできない約束をしてはいけない。したくない約束をなんとなくの義務感や付き合いでしてはいけない。社交辞令のつもりで言った「また会いましょう」は、自分を縛り付ける。人間は一貫性を求めるもので、たとえ相手が忘れていても、自分が発した言葉に矛盾することはできない。だから、会いたくもない人にまた会うはめになる。未来の自分を犠牲にしてはいけない。

むやみに願ってはならない。現状と違う未来を望むことは、現状を否定することだ。自分と違う存在になりたいと願うことは、自分を否定することだ。本当に、願いすぎてはいけない。願っていいのは、荒唐無稽なほど大きなことか、あるいは本気で実現することの二つだけだ。願うなら、全力で、犠牲を払ってでもそれを実現しなくてはいけない。願ったとおりの現実を手に入れなくてはならない。そうでないと、願いは呪いになって心に沈殿していく。

むやみに正しくあってはならない。正しさは凶器だから。正しさを振り回してはいけない。正しくないことでやたらと他人を攻撃してはいけない。正しさは、本質的に人間と相性が悪いからだ。あなたにだって、いつかは正しくあれない時が来る。そのとき、いままで砥ぎに砥いだ鋭利な刃はあなたに向かってくる。