あれとこれが矛盾してるじゃん! って思うことは珍しくはない。でも、突き詰めていくと何事かが本当に純粋な意味で矛盾していることはないのだと思う。何か前提を置いているから、矛盾していると感じてしまうだけ。その前提を、ちゃんと考え直す必要がある。…
親戚の葬儀に出る。地元の名士とでも言うべき人物で、ずいぶんたくさんの人々が参列していた。代々檀家をしている寺で、一族に顔なじみらしい僧侶が読経をはじめる。その声が響き渡る本堂で、そっと薄眼を開けながら考えることがある。わたしは一生のうちに…
よい教育は、卒業して終わるものではなくて、むしろ卒業を始まりにして一生続くもの。それが、「学び方を学ぶ、学ぶ姿勢を学ぶ」という言葉の意味。 よい本は、読み終わって情報を得ておしまいではなくて、むしろその後の人生で経験することの意味を変える。…
社会で他人が不愉快な振る舞いなんかをしていたときに「とてもつらいことがあったり、特別な事情があったのかもしれないじゃん。そういう想像力が大事だよ。」みたいな言説、とてもよくあるもの。昔は好きだったけどなんだか浅く感じる。子どもだましでしか…
私たちは、物事を考えるとき、「自分の心が変わる」ということを忘れてしまいがちに思います。それはきっと、自分=世界の中心という揺るがしがたい直感があるから。そして世界の中心はすなわち不動だからなのでしょう。 だから、物事の因果関係を考えるとき…
The fox who longed for grapes, beholds with pain The tempting clusters were too high to gain; Grieved in his heart he forced a careless smile, And cried, ‘They’re sharp and hardly worth my while.’ 1 金、肩書、名誉、人間関係、どんなことにし…
人生はね、ごはんにふりかけなんだよ。 人生は、カラフルで味の濃いふりかけ部分が本体なんじゃない。単調な白米の部分が本体。 白米が食べられるというだけで、雑穀や玄米しか食べられなかった時代に比べたら贅沢だよね。ありがたく思うべき。でもそんなの…
むかしずいぶん長く関わっていた人たちの集まりがあることを間接的に耳にした。直接は何も知らされていなかった。心がざわざわした。こういうことはたまにある。またか、と思いながら、いいよどうせ馴染めてなかったし、あんまり好きじゃないし、これでいい…
久しぶりすぎて、スーパーまでの外出が非日常に感じられた。夏の空気、昼の暑さがまだ残る夜の始め。セミが鳴いている。もわっとした空気が全身にまとわりつく。なぜだか夏は古い記憶を刺激する。特定のエピソードという形を取らない、いろいろな記憶が混ぜ…
あるときこんな問いに出くわしました。「あなたが本当に素直に頼ったり相談できる人は何人いますか」見当もつかない。周りに人はいるけれど、本当に頼れるのでしょうか。 あるいは、ある人を形容するときに「友達」と呼ぶか「知り合い」と呼ぶかで迷います。…
絶対的真理かのように説教くさく撒き散らされる「話し合えばわかる」「ちゃんとコミュニケーション取らなきゃ」みたいな言説は、なんて軽薄なのでしょう。 あなたそれ、本当に考えて言ってますか。この世の中、手垢のついた文句ばかり右から左に流している…
以前、恩師の恩師に一回だけ出会ったことがある。話してみると、まったく同じではないけれど、恩師の教えの原型があった。感動してしまった。だって、そこに命の連続性を見たから。そうやって人と人は間接的にもつながっていけるという希望を得たから。わた…
私の長年の友人であり、一番の理解者であるあなたへ。 それなりの年数を生きているうちにたくさんの人と出会ってきても、掛け値なしに、あなたほど気が合う人はいないと思っています。そんなあなたに仲良く接してもらえていることを非常にうれしく思います。…
物件情報サイトを開く。あれこれの条件で絞ってもまだまだたくさんの物件が表示されて、写真、間取り、立地などの情報をスクロールしていく。どこに住もうかなあと想像を巡らす。選択肢にあふれている。そしてそれぞれの選択肢は、きっと人生で見る景色をず…
過去、あのとき、人生に大きな分かれ道があったと思うんです。だいたい20年くらい前かな。あのとき、違う道をたどっていたら、いまごろどうしていたんだろう、そんな考えにずっと付きまとわれて生きてきたんです。人生の裏街道、"wrong side of my life"を生…
変化という言葉がこれほど肯定的な意味で使われる時代がかつてあっただろうか。猫も杓子も変化変化。政治スローガンが変化に関するものばかりなのは言うに及ばず、仕事も生活もすべてが変化を謳う文句に溢れ、人々がみな変化を志向して生きている。社会を、…
このごろ、残滓のような交友関係にはまり込んでいることに気づく。かつて身をおいた場所で付き合いのあった人たちとの関係を維持することを怠っていた。だからいまさら連絡してくるのは、人望のない人間、他に友達のいない人間、give&takeというよりはtake&t…
「庭の木を剪定する時季は、冬の早いうちでないといけない。そうじゃないと、春に出てくる新芽まで切り落としてしまうことになるから」そんな言葉が記憶に残っている。 自己について内省を巡らすことも、これと似ていると思う。それは混沌として、散らばって…
森で大きな木が倒れたとき、樹冠に空隙ができ、そこから日光が地上に届くようになる。普段は地上から苗木が育つことは難しいが、そのときだけは別だ。そういうとき、どんな木が空隙を埋めるかは大事なことだ。だって、それは貴重なチャンスだから。とりあえ…
人生の選択において、いちばん重大な過ちは、「選択するぞ」と思ってする選択で間違えることではない。そうではなくて、「選択に気づかなかったり、選択を避けたりした結果としての選択」こそが過ちになる。何もしないこと。習慣や他者にならって選択するこ…
感謝されることに気をつけなさい。それはあなたがあなた自身の人生ではなく、他人の人生を生きた印だから。 感謝されるのは、危険なことだ。だれかのために時間を使って、いたく感謝されて、それで他のことはたいしてしないままで日が暮れて、ああいい一日だ…
私たちは、「選ぶ」ことに慣れている。どこに暮らして、だれとつるみ、どんな仕事をするか。トレードオフはどうしても発生するし、選択肢の範囲に限りはあるが、その範囲内でならどうやって生きていくかはあなたしだいだ。あなたが気分を変えれば、いかよう…
人生というものは、大海原を自由に航海し、大樹海を泳ぎ、大草原を駆けることだと思っていた。無限に冒険が広がっているのだと思っていた。 そういうふうにして人生を送っている人もいないことはない。だけど、ほとんどの人はそんな人生からは程遠い。わたし…
「レールから外れると人生は自由になる」という言説がある。これは、まちがっている。レールから外れれば外れるほど、「遅れを取った」分を取り返さなければいけない気がして、人一倍、一直線な道、いわば「人生の高速道路」を走ることに必死になってしまう…
このごろ、夜遅くまでずっと大学に残る荒んだ生活をしていた。静かな夜の街を歩いて、帰宅したら寝るだけの生活。あるいは無為に夜更かしをしていることもある。食事は自室ではとらず、コンビニで買ったり食堂に行ったりしてすませる。 ところが最近引っ越し…
長い間、凡庸未満であることに劣等感を抱いてきた。 誰でもができることができなくて、誰でもが知っていることを知らなくて、誰でもが経験していることを経験していなくて。 だから、どうにか乗り越えようと歯を食いしばってがんばってきた。どうせ自分には…
わたしはずっと、優しい人間になりたいと思ってきた。 だれかが困っているのに見捨てるなんてとんでもない。手を差し伸べられるようになりたかった。現実はそんなに簡単じゃなかった。気づけないことが多かった。でもそれ以上に多かったのは、気づいていたの…
こんなところで何を綴っても、すべてがひどく自明なことでしかないのではないか。 これが情報量のある文章なら違う。役に立つ話でも、何かのストーリーでもなんでもよいが、とにかく知らなかったものを伝えるなら意味がある。でも、日常的な話題について日常…
私たちは、ナマモノです。ざっくり言ってしまえば、単なる肉のかたまりです。常温に放置された肉のかたまりです。考えてみてください、これってすごいことだと思いませんか? 肉を冷凍庫にしまい忘れて常温で放置していたら、数日のうちに腐って、臭くてたま…
友人と会う。恋愛関係の愚痴を聞かされる。なんだか、同じようなことを以前も聞かされたことがある。あのときは違う相手についてだった気がする。「それ、前も言ってなかった?」とは言わなかったけど、聞きながら気づいたことがある。 恋愛にせよ、友人関係…