青春にさよならを

10年近くも前から好きな人と、ずっと友人関係が続いている。別にひんぱんに会うわけでもないし、ひんぱんに連絡を取るわけでもない。会おうと思えば合える関係。でも距離があるから、たまにだけ。

知り合ってわりとすぐ好きになって、一方的に思い詰めた末にある日いきなり告白して、当然ひどく振られた。そのときのメールは受信ボックスがあふれて消えないよう、鍵をかけて保存してあったけど、スマートフォンに乗り換えるときに失くしてしまった。

そのあとも諦めていないことを半ば隠さず、数年かけて友人として関係を築いたのち、別れの春に再度の告白まがいのことをしようとしたけれど、うまいこと流されてしまった。

あのころはまだ人との接し方を何も知らなかった。すべてがひどく下手だった。今ならもっとうまくできるのに、と思っても無駄だよね。その時うまくできないと意味がない。人生、そんなことばっかり。いつも後追いで生きている。

あのころの自分はあまりに純粋すぎて、あきらめるとかそういう発想を持つことができなかった。毎日毎日想うあまり、わたしにはあの人しかいないと暗示をかけてしまった。夢の中でもいいから一緒にいたいと願っていた。

それからあとは、日常的に顔を合わせるような関係ではなくなったけど、それでも友人づきあいは続いていた。と言うより、その人の優しさゆえに関係を続けてくれていたのでしょう。もしわたしがあの人の立場だったら、きっともう顔も見たくなかったくらいだろうに。

そして歳月が流れ、もっと距離が遠くなった。でも、その人の不在は、わたしの想いを成仏させてくれはしなかった。けっきょく、いつまでも気持ちを切り替えることはできなかった。

でももう、この想いは封印すると決めた。せっかく友人関係を保ってくれているのだから。向こうにはそういう気はないとわかっているから。そしてなにより、この想いはあの人の実像ではなくて、わたしの心が見ている蜃気楼にすぎないことがわかるくらいには、わたしは大人になってしまったから。

きのう、久しぶりに会ったその人と二人で、浜辺で花火をした。もう青春という歳でもない気がするけど、それでもすごく青春みたいだった。線香花火に照らされる少し意地悪な笑顔は、知り合ったころと変わらず、すてきだった。

だけど花火は儚く消えて、夜の暗闇が戻ってくる。熱帯夜なのに、心臓がつめたくなる。知ってた、けっきょくつらくなるだけだって。なのになんでまた会ってしまったの? だってどうしても会いたかったんだもん。だって、好きなんだもん。

そんな言葉は飲み込んで、また来年くらいに会おうね、そのころにはもう元号が変わってるね、と言ってばいばいした。この想いからは、まだ自由になれそうにない。そんなわたしの心は、聡明なあの人にはきっとぜんぶ見透かされている。

そろそろ、平成と一緒に、青春もおしまいかな。とても甘酸っぱくて、わたしは幸せ者です。