能ある鷹は爪を隠す

文章術、交渉術、プレゼンテーション術、デザイン、あるいはもっと一般に対人スキル。これらは非常に重要なものだ。だから、世の中にはその情報があふれている。きっとあなたもひとつくらい受け売りで試してみたことがあるのではないか。

しかし、注意しなくてはならない。技が衆目を集めてはいけない。技を使っていることを気づかれてはいけない。技はあくまで情報を伝えたり、人間関係を円滑にするための手段であって、技を誇示することは目的ではない。あなたが伝えたいこと、あるいはあなた自身の存在を置き去りにして、技だけが一人歩きするようではいけない。

それに、技を持っていると知られれば相手に警戒されてしまう。巧妙な文章は、巧妙な演説は、あるいは巧妙なセールストークは、格闘術と同様に、悪用が可能なものだ。あなただって、セールスをするとき、「わたしは部署でもトップの売り上げなんです」とか言わないだろう。でも「この商品は一番売れてるんです」は言うはずだ。つまり、商品の良さは本質だが、セールスのうまさは欺瞞の術だということだ。だから、その術は隠さなければならない。

他の技術でもそうだ。文章でもそうだ、いかにもな構造をしていたり、いかにもなエピソードを挟んでいたり、お手本通りの文章の書き方はすぐにわかってしまう。プレゼンでも、いかにもコンサルが書いた本を鵜呑みにしているなというのはすぐわかる。こういうのがわかるようになるために、世に出回っているハウツー本に目を通しておく価値はある。ほとんどがどこかで見た話の劣化コピーでしかないが。

だから、調子に乗ってはいけない。技の習得過程で試してみるのは悪いことではないが、それは最終形ではないことはわきまえる必要がある。技を縦横無尽に使う自分がかっこいいとか思ってはいけない。その先に行かなくてはいけない。技を使いつつ、それが悟られない自然さと両立できるところまで。

けっきょく、一言で言えば、「能ある鷹は爪を隠す」ということに尽きる。